ブドウの選び方と温度管理だけで、同じ原料から別物の味が生まれると聞いたら驚きませんか?

特に発酵温度の管理は重要です。赤は中高温で果皮と一緒に発酵し、白は低温で果汁だけを扱います。
また、殺菌工程での蒸気利用はタンクや配管の衛生確保に効果的です。小規模から商業生産まで設計可能で、品質安定化の鍵となります。
主要な要点
- 工程はシンプルだが原料が最重要であること。
- 温度管理で風味と安定性が変わる。
- 蒸気を使った衛生管理は実務で有効。
- スパークリングは製法で味とコストが変わる。
- 設備投資は発酵・温調・ボイラーが中心。
ワイン醸造の全体像と基本フロー
収穫から瓶詰めまでの工程は見た目よりずっと単純で、その分素材の差が結果に直結します。「ブドウ品質が8割」という通説は、実務でもよく当てはまります。

工程が単純だからこそ「ブドウ品質」が8割を決める
収穫のタイミングは熟度と酸・糖バランスで決まります。北半球は9〜10月、南半球は3〜4月が一般的です。
選果で未熟粒や腐敗果を除くことで、不快な風味や衛生リスクを下げられます。健全な果実は工程全体の安定化に直結します。
収穫から発酵・熟成・瓶詰めまでの流れ
- 収穫→選果→除梗・破砕
- 発酵(酵母が糖をアルコールとCO2に変えます)→圧搾/澱引き
- 熟成(ステンレス/樽)→清澄・濾過→瓶詰め
赤は果皮・種とともに、白は果汁だけを発酵させます。ロゼはセニエ法・直接圧搾・混醸のいずれかです。スパーク リング ワインは二次発酵の有無により工程が大きく変わります。
品質安定の要点は温度管理、酸素コントロール、衛生(CIP/SIP)、容器選択、そして澱引きやブレンドのタイミングです。後続で温度最適化と蒸気による衛生管理について詳しく解説していきます。
ワイン 作り方の基礎:赤・白・ロゼ・スパークリングの違い
果皮や種との接触時間が、味と構造を決める要素です。
赤ワインの基本は黒ブドウを果皮・種と一緒に発酵させることです。これにより色素とタンニンが抽出され、骨格のある味わいになります。

ロゼとオレンジの位置づけ
ロゼは主に三つの手法で作られます。セニエ法、直接圧搾法、混醸法があり、色と香りは接触時間で決まります。
オレンジワインは白ブドウを赤のように果皮・種と一緒に醸す古い手法です。独特のテクスチャーと色合いが出ます。
| スタイル | 原料の扱い | 特徴 |
| 赤 | 黒ブドウを果皮・種と一緒に発酵 | 色濃くタンニン高め、熟成向き |
| 白 | 圧搾して果汁のみを発酵 | 淡色で酸と香りが際立つ |
| ロゼ | セニエ/直接圧搾/混醸 | 軽快〜芳醇まで幅広い |
| オレンジ | 白ブドウを果皮・種と長時間接触 | オレンジ色調・タンニンとテクスチャーが特徴 |
この違いを押さえると、後続の温度管理や衛生対策で何を優先すべきかが明確になります。
赤 ワイン の作り方:黒 ブドウ を用いた発酵と醸し

除梗・破砕とマセラシオンのコントロール
除梗は青臭さを抑えるために行います。完全除梗で渋みを和らげ、部分的除梗で構造を残せます。
破砕は軽めに。マセラシオンは5〜15日が目安で、接触時間で色素・タンニンを調整します。
発酵温度帯とMLFの要点
発酵温度は26〜30℃が一般的です。高温で抽出と発酵が速まり、低めで果実味を保ちます。
「温度・溶存酸素・衛生の三位一体で欠陥を防ぐ」
主発酵後にMLFを行い、リンゴ酸を乳酸に変えて酸の角を取り、口当たりを柔らかくします。
圧搾・フリーランとプレスのブレンド設計
圧搾でフリーラン(繊細な果実味)とプレス(構造・色)を分けます。
- ルモンタージュ/ピジャージュで均一な抽出を狙う。
- 品種特性に応じて接触時間を短縮・延長する。
- 衛生と温調を厳守し、揮発酸や還元臭を回避する。
仕上げは澱引きと酸素管理で安定化。容器選び(ステンレス/樽)とブレンドで狙いのスタイルを作り分けましょう。
白 ワイン の作り方:果汁 のみ を 発酵 させる低温管理
圧搾→デブルバージュ→主発酵の衛生と透明度設計
収穫直後に速やかに圧搾し、フェノール抽出を抑えます。
その後数時間静置してデブルバージュを行い、粗い固形物を沈めて上澄みのみを発酵に用います。
主発酵は一般に12〜18℃で10日〜3週間。低温で進めることでフローラルや柑橘系の香りを保持できます。
ステンレスタンクと樽の選択、バトナージュの可否
ステンレスは香りを付与せず、フレッシュさを守るのに適します。
樽は酸素透過と木香で複雑さを与えます。シャルドネは樽で厚みが出やすく、リースリングはステンレスで素の香りが映えます。
- スタイルによりMLFを部分的に採用して酸の質感を調整します。
- バトナージュは澱由来の旨味を引き出しますが、酸化・還元管理が前提です。
- 清澄・濾過の度合いは透明感と旨味保持のバランスで決めます。
衛生面では圧搾機や配管のCIP導入が品質安定の基礎です。低温維持はジャケット冷却やプレートクーラーで行い、温度監視を徹底してください。
ロゼ ワイン の作り方 は:セニエ法・直接圧搾法・混醸法
同じ黒ブドウを使っても、処理方法で淡いピンクから濃いルビーまで作れます。
代表的な三つの手法と特徴
セニエ法は赤の浸漬中に果汁を抜く方法です。軽やかな色合いと同時に残った果皮が濃縮され、しっかりした骨格が得られます。
直接圧搾法は黒ブドウを素早く搾ることで淡いピンクを狙います。フレッシュで軽快なスタイルに向き、果皮接触を最小限にします。
混醸法は黒果と白果をを一緒に発酵させる伝統手法です。地域の慣習に根差した独自の香味が出ますが、EUでは赤白ブレンドは原則禁止である点に留意してください。
色と味を決める実務ポイント
色は品種のアントシアニン量、接触時間、搾汁圧力、酸度バランスで決まります。
香味設計では低温管理で酸を核にベリーや柑橘を引き立てる点が重要です。SO2と低温保持で色安定と酸化抑制を図りましょう。
スパークリングワイン(スパーク リング ワイン)の製法
方式別の特徴と向き先
トランスファー方式は瓶内で発酵後、加圧下でタンクに移し濾過するため均質性と効率を両立します。
シャルマ方式(タンク内発酵)は加圧タンクで二次発酵を完結させ、フルーティなアロマを残して大量生産に適します。
甘辛の決め手:ドザージュ
甘辛はベースの残糖とドザージュ量で決まります。表示(ブリュット等)は設計の反映です。
| 方式 | 泡質 | コスト/生産性 |
| トラディショナル | 非常に細かくクリーミー | 高コスト・低回転 |
| トランスファー | 均質で安定 | 中程度のコスト・高効率 |
| シャルマ | 弾ける・フルーティ | 低コスト・大量生産向き |
| メトード・リュラル | 素朴で地域色が強い | 小規模向け・低~中コスト |
実務的には、ベースワインを白やロゼの発想で作り、温度と時間で泡のきめを調整します。
温度管理の実務:発酵 さ せる最適レンジと品質安定
赤と白で異なる最適温度と冷却・加温の手段
赤ワイン向け:目安は26〜30℃。抽出と構造形成を促進します。
白ワイン向け:12〜18℃で10日〜3週間の低温発酵が一般的で、アロマを保持します。
- 冷却:ジャケットタンク、グリコールチラー、プレート式熱交換器、ドライアイスのスポット使用。
- 加温:タンクヒーター、温水循環、発酵熱の保持と保温ジャケット。
温度逸脱がもたらすリスクと回避策
逸脱は発酵停止、揮発酸増加、硫化物発生、香気の損失、過剰抽出などの原因になります。
- 予防:スターター管理、栄養塩の適正化、ロガーとアラートの常時監視。
- 運用:昇降温の勾配管理、予備冷凍能力、温度制御の自動化でバッチ差を抑えます。
- 特記:スパークリングの二次発酵は低温長期が泡質向上に有利です。
温度管理は衛生管理と並ぶ品質基盤であり、両者をセットで設計することが安定生産の近道です。
死菌・衛生管理における蒸気利用:小規模から商業生産まで
蒸気によるタンク・配管・充填ラインのCIP/SIP
CIPでアルカリ・酸による洗浄を行い、その後SIPで蒸気滅菌を行うと微生物リスクが大幅に下がります。
小規模では電気ボイラーやコンパクトスチーマーで十分です。将来の増強に合わせ段階的に容量を増やせます。
酵母・乳酸菌管理と再汚染防止の動線設計
MLFを意図する設備は区画化し、器具やホースを明確に分けて管理してください。
原料導線とクリーンエリアを分離し、ワンウェイの人・物動線を設計すると再汚染が防げます。
- 充填前はボトル洗浄・乾燥・無菌空間の維持が必須です。
- スパークリングの加圧充填は弁・ガスラインのSIPが欠かせません。
- 清澄・濾過は濁度と微生物検査のデータで調整します。
- 樽は蒸気で滅菌すると熟成の安定性が向上します。
記録の整備も重要です。洗浄・滅菌ログはトレーサビリティと監査対応に役立ちます。
瓶詰めは繊細で、不純物混入が香味を変えます。適切なCIP/SIPで品質を守りましょう。
この節で示した衛生設計は、赤 ワインや白 ワイン の品質安定に直結します。工程全体の作り方を見直す際の指針としてご活用ください。
設備投資の考え方:品質とコストの最適化
どの設備を優先するかで醸造の幅と運転コストが大きく変わります。まずは温度管理と衛生に直結する装備を中心に考えてください。
発酵タンク・樽・温調・ボイラーの選定軸
発酵タンクは温調ジャケット有無、断熱性、CIP対応で選びます。白 ワインやスパークリング主体なら温調性を最優先にしてください。
樽はトーストレベルやサイズで介入度を調整できます。赤 ワインにはタンニンの丸み付与、白には厚み付与で活用します。
ボイラーはCIP/SIPや樽滅菌、温水供給の要です。容量は同時使用点数とピーク負荷から逆算します。
小規模醸造での段階投資と拡張性
まずチラー、CIP対応タンク、基本の蒸気源を揃えるのが費用対効果が高いです。ポンプやホースはサニタリー規格を選び、SIP適合を確認しましょう。
スパークリングを視野に入れる場合は耐圧タンクや加圧充填機を計画段階から想定してください。エネルギー効率や熱回収はランニングコストに直結します。
最後に、センサー・データロガーを導入すると温度・圧力・清浄度が可視化され、品質の再現が容易になります。段階的投資で拡張を見据える設計が長期的な成功を支えます。
現代技術と伝統の比較:酵母選択と容器の違い
天然酵母と培養酵母、アンフォラとステンレスの使い分け
天然酵母はテロワールを反映しやすく、多様な香味をもたらしますが、発酵の立ち上がりや完結が不安定になりがちです。
培養酵母は再現性が高く、狙いの香味(エステルやチオールなど)を設計できます。
容器は目的別に併用するのが現代の定石です。ステンレスは中立で温調が容易です。
オーク樽は酸素透過と木香を与え、赤 ワイン の構造形成に有効です。アンフォラは微酸素と保温特性でオレンジ系のスタイルと相性が良いです。
- 赤と白での選択基準は異なります。赤は樽でタンニン変化を促し、白はステンレスでアロマを守る傾向があります。
- 現代技術(栄養管理・温度制御・SIP)は天然酵母のリスク低減にも貢献します。
醸造哲学は「安定性重視」か「個性重視」かの連続体で、ブランド戦略に合わせた最適解を選ぶべきです。
結論
小さな管理の差がボトル一本の評価を左右します。収穫したブドウの健全性を出発点に、発酵管理と温調、蒸気によるCIP/SIPが品質安定の要です。
赤 ワイン と白 ワイン は処理が異なるため、温度設定と容器選びで狙いを明確にしてください。ロゼやスパーク リング ワイン の方式選択も泡質やコストに直結します。
実務の次アクションはまず現行の温度ログと洗浄・滅菌ログを見直すことです。優先順位は温調装置、ボイラー、CIP対応タンクの順で検討すると効果が出やすいでしょう。
この記事をガイドに、目標のスタイルに合わせてプロセスと設備の最適化を段階的に進めてください。
FAQ
ブドウの収穫時期はどう決めますか?
糖度(Brix)と酸度、そして味わいを確認して決めます。品種や地域によって適正な収穫時期が異なります。成熟が進めば果皮の色やタンニン、香りも変わるため、品質重視で判断します。
赤と白で醸造工程の最大の違いは何ですか?
主な違いは果皮・種の扱いです。赤は果皮と一緒に醸し(マセラシオン)して色やタンニンを抽出し、白は果汁のみを低温で発酵させ透明度を保ちます。
ロゼはどのように色を出しますか?
セニエ法(抜き取り)、直接圧搾法、混醸法などがあります。接触時間や品種、酸度が色合いを決め、短時間の果皮接触で淡いピンクになります。
スパークリングの主な製法の違いは?
トラディショナル方式は瓶内二次発酵で泡が細かく長持ちします。シャルマ方式はタンク内で速やかに発泡させるためフレッシュさが出ます。トランスファー方式は中間的で効率性を高めます。
発酵温度の管理はなぜ重要ですか?
温度が高すぎると香りが飛び、低すぎると発酵が停止します。赤はやや高温(20〜30°C)、白は低温(10〜18°C)が一般的で、安定した冷却・加温設備が品質維持に不可欠です。
マロラクティック発酵(MLF)はいつ行いますか?
主発酵後に酸味を柔らかくしたい場合に行います。特に赤や一部の白(シャルドネなど)で使用し、乳酸菌による酸変換で口当たりがまろやかになります。
圧搾のタイミングとフリーランの違いは?
フリーランは自然に流れ出る果汁で品質が高いです。圧搾は残りを押し出して成分を抽出する工程で、ブレンド比率を設計して使い分けます。
衛生管理で蒸気はどのように使われますか?
タンクや配管、充填ラインのCIP/SIPに蒸気を使い、微生物や汚れを効率よく除去します。小規模でも適切な蒸気設備で再汚染リスクを下げられます。
酵母は天然と培養どちらが良いですか?
どちらにも利点があります。天然酵母は複雑な風味を生み、培養酵母は発酵の再現性や管理性に優れます。目指すスタイルで使い分けます。
樽とステンレスの使い分けは?
樽は酸化や木由来の香りを与え、熟成を促します。ステンレスは風味を純粋に保ち、温度管理が容易です。品種やスタイル、コストで選びます。
小規模醸造で設備投資を抑えるコツは?
段階的投資でまず基本のタンクと温調、圧搾機を揃え、需要に応じてボイラーや樽を追加します。将来の拡張性を見越した選定が重要です。
オレンジワインとは何ですか?
白ブドウを赤と同じように果皮と長時間接触させて醸す方法で、色は濃い琥珀色に近く、タンニンや複雑さが増します。伝統的な手法と現代技術が混在します。
発酵停止や異常が起きた場合の対処法は?
温度管理の確認、栄養補給、酸素供給の調整、必要なら補酵母や酸調整を行います。速やかな原因特定と対応が品質維持に直結します。
残糖や甘辛の調整はどうしますか?
ドザージュや発酵止め、バランスの取れた残糖管理で甘辛を決めます。スパークリングでは特にドザージュが風味の最終調整になります。
種(種子)や果皮を一緒に発酵させるとどうなりますか?
種や果皮からタンニンやフェノールが抽出され、味わいの骨格や色、保存性に影響します。抽出コントロールが品質の鍵です。
