スチームトラップは、蒸気システムの効率を上げる最重要機器です。小さな装置ながら、エネルギー効率の向上や設備の長寿命化に役立ちます。

スチームトラップは、圧力蒸気使用機器から凝縮されたドレンのみを排出します。同時に、蒸気の漏れを最小限に抑える自動弁として機能します。配管システム内で重要な役割を果たし、蒸気の効率的な利用を可能にします。

スチームトラップとは

主なポイント

  • スチームトラップは蒸気システムの効率を向上させる重要な装置
  • ドレンの排出、エネルギーロスの防止、設備保護が主な役割
  • フリーフロート、サーモスタッド・サーモダイナミック、メカニカル、オリフィスの4つの主要タイプがある
  • 正しいスチームトラップの選定と設置が蒸気システムの性能を左右する
  • 定期的なメンテナンスがトラブル防止に不可欠

スチームトラップの選定は、使用条件や必要なドレン排出量に応じて慎重に行う必要があります。適切なスチームトラップを選ぶことで、システム全体の効率が大幅に向上し、エネルギーコストの削減にもつながります。次のセクションでは、スチームトラップの基本的な機能や種類について、さらに詳しく見ていきましょう。

スチームトラップとは

スチームトラップは蒸気システムで必要不可欠で大切な役割を果たします。必要な蒸気圧力を保ちながら、不要なドレン水を排出する自動弁です。この装置をうまく使うと、システムの性能が上がると同時に燃料コストの削減に繋がります。

自動弁としての基本機能

スチームトラップの主な仕事は、蒸気圧力を保持しながら不要なドレン水を排出することです。これにより、安定して効率的な運転が可能になり、なおかつ燃料エネルギーを節約できます。

スチームトラップの作動原理

JISにおける定義と位置づけ

日本工業規格(JIS)では、スチームトラップを次のように説明しています:

「スチームトラップ」とは、機器、配管などからドレンを自動的に排出する自力式のバルブの総称

この定義は、スチームトラップが自動で働くことを示しています。蒸気を効率的に使うのに重要な役割を果たします。

システムにおける重要性

スチームトラップは、蒸気システムの効率と信頼性に影響します。各機器や配管に適切なトラップを使うことで以下の利点があります:

  • エネルギー効率の向上
  • 設備の保護
  • 運転コストの削減
  • 製品品質の向上

これらの利点から、スチームトラップの選定とメンテナンスは重要です。適切なスチームトラップを選ぶことで、長期的な効率と信頼性を保ちます。

スチームトラップの基本的な役割

スチームトラップは蒸気システムで重要な役割を果たします。国内外にいくつかのメーカーがあります。草分け的なイギリスのメーカーである、スパイラックスサーコの他に国内メーカーではTLVやミヤワキ、ヨシタケ、大洋弁栓製のスチームトラップなど、様々なメーカーの製品があります。スチームトラップの機構に関しては各社独自の機能等はありますが、これらは全て自動バルブで、ドレンを効率的に排出するものです。

適切なスチームトラップの選定はエネルギー効率を最適化し、設備を保護する機能があります。

ドレン排出の仕組み

スチームトラップは蒸気とドレンの特性の違いを利用し自動的にドレンを排出します。

フリーフロート、サーモスタッド・サーモダイナミック、メカニカル、オリフィスの4つのタイプがあります。フリーフロートタイプは、ドレンの流入量に応じて即座に排出します。

スチームトラップの役割

エネルギー効率の最適化

スチームトラップは蒸気の無駄な排出漏洩を防ぎ熱エネルギーを最大限に活用します。

燃料コストも削減し、省エネに貢献しますのでボイラー燃料消費が減り、CO2排出量も削減されます。

設備保護機能

スチームトラップはウォーターハンマー現象を防ぎます。適切に設置・維持することで、想定外の圧力上昇やドレン溜まりによる衝撃リスクを低減します。

配管材料の腐食を抑え、配管のリークや機器の動作不良を防ぎます。

スチームトラップの種類特徴主な用途
フリーフロートバケット(メカニカル)ドレン流入量に応じて即座に排出大容量のドレン処理が必要な場所
サーモスタティック温度に応じて排出を制御温度制御が重要な工程
サーモダイナミック(温調)
ディスク(幾何学)
オリフィス      
蒸気の凝縮と運動エネルギーを利用
衝撃に強い

半永久的に使用可能
高圧・高温の蒸気システム

管末等の蒸気衝撃の有る場所

正確にドレン排出量がわかる機器に有効

スチームトラップの適切な選択と使用は、システム全体の効率と寿命を向上させます。定期的な点検とメンテナンスで、異常を早期に発見し、設備の長寿命化を図ることができます。

スチームトラップが必要な理由

スチームトラップは、蒸気システムの効率と安全を守るために必要です。

蒸気の特性として必要な圧力の保持が重要になります。そのため蒸気が凝縮して機器内部でドレンが発生すると、様々な問題が生じます。例えば、熱交換効率の低下やウォーターハンマー現象、配管や機器の錆や腐食などです。

スチームトラップの役割は3つです。まず、ドレンを速く排出し、配管内部でのウォーターハンマー現象を防ぎます。次に、蒸気を漏らさずにドレンを排出して生産性保持と省エネ効果を実現します。最後に、不活性ガスを排出して熱伝達率の低下を防ぎます。

スチームトラップは、これらの問題を未然に防ぐ重要な役割を果たします。ドレンを速やかに排出することで、システムの熱効率を最大化し、設備の寿命を延ばします。特に大型プラントでは、数千台ものスチームトラップが使用されることがあります。

スチームトラップの効果結果
ドレンの速やかな排出ウォーターハンマー防止、熱利用最大化
蒸気漏れ防止省エネ効果の実現
不活性ガスの排出熱伝達率低下防止、蒸気圧力維持
スチームトラップの機能

スチームトラップは、蒸気システムの健全性を維持するために不可欠です。適切に選定され、設置されたスチームトラップは、システム全体の効率を向上させます。

スチームトラップの種類と特徴

スチームトラップにはいろいろな種類があります。それぞれが独自の機能を持っています。4つのタイプに分けられ、使う条件や目的に合わせて選ぶことが大切です。ここでは、それぞれの特徴と仕組みを詳しく見ていきましょう。

スチームトラップの種類

メカニカル式(機械式)の特徴

メカニカル式スチームトラップは、内部のフロートやバケットを使って機械的にドレンを排出します。このタイプは信頼性が高く、環境が変動しても安定して動きます。メカニカル式には2つの主な種類があります:

  • バケット式:上向きと下向きがあり、ドレンの重さで動きます。
  • フロート式:レバー付きとフリーフロートがあり、浮力で動きます。
  • 弱点として機械的な構造のため衝撃に弱いという弱点があります

サーモスタティック式の仕組み

サーモスタティック式は蒸気とドレンの温度差でバルブを開閉します。小さく軽いので、狭い場所でも使えます。主な種類は以下の通りです:

  • バイメタル式
  • サーモエレメント式
  • ベローズ式(カプセル式)
  • サーモワックス式

これらは蒸気と凝縮水の温度差で動き、効率よくドレンを排出します。特に蒸気配管内のエア抜きに優れています。

サーモダイナミック式の利点

サーモダイナミック式は蒸気と凝縮水の特性の違いを利用します。オリフィス式とディスク式の2つに分けられるものが主なタイプで、シンプルながらも信頼性が高いです。主な利点は:

  • 衝撃に強く耐久性が高い
  • 広範囲の圧力変動に対応可能
  • 凝縮水の排出が速い

スチームトラップを選ぶ時は、これらの特徴を理解し、システムの要件に合ったタイプを選ぶことが大切です。適切な選択で、エネルギー効率の向上と設備の長寿命化が実現します。

正しい選定のポイント

スチームトラップを選ぶことは、蒸気システムの効率と信頼性に影響します。正しい知識と方法で選ぶことで、最適なスチームトラップを選ぶことができます。

使用条件の確認事項

まず、使用条件をよく理解することが大切です。圧力、温度、設置環境などを考慮して選ぶ必要があります。例えば、スパイラックスサーコのBPT13-SXは0.01~1.30MPaGの圧力で使えます。

内部流入方式や接続方式も重要です。ねじ込み、フランジ、溶接などを考慮しましょう。

ドレン発生量の計算方法

次に、ドレン発生量を正確に計算することが大切です。熱負荷、蒸気消費量、配管長さなどを考慮します。クリーニング業界で使用される綿仕上げプレス機の蒸気使用量は15kg/hrから30kg/hrです。

安全係数の考慮

最後に、安全係数を考慮することで、予期せぬ変動にも対応できます。一般的には、ドレン発生量の3倍の排出能力が推奨されます。

これにより、システムの安定性と効率を保つことができます。

正しい選定で、ドレン漏れや蒸気漏れを防ぎます。熱交換率も上がり、燃料コストも軽減されます。システム全体の性能を最大化できます。

スチームトラップの設置場所と用途

スチームトラップは、蒸気システムの効率と安全を守ります。自動弁として、配管内でドレンを排出します。蒸気主管、分岐管、熱交換器、加熱タンクなどに設置されます。

蒸気主管では、低部(ローポイント)や長距離直線部にスチームトラップを設けます。ドレンの滞留を防ぎ水激の防止に役立ちます。熱交換器では、効率的な熱交換を維持するため適切な位置にスチームトラップを配置します。

加熱タンクでは、タンク底部近くに設置します。完全なドレン排出を図ります。

スチームトラップの選定には、使用条件や必要排出量を考慮する必要があります。フロートトラップは機械式で信頼性が高く、温度・圧力の変動に素早く対応できます。

クリーニング産業では、ほぼ全ての蒸気機器にスチームトラップが取り付けられています。綿プレスでの蒸気使用量は15〜30kg/hr程度です。ドライクリーニング機や蒸留機では蒸気の必要量が大きいですが、占有体積は小さい特性があります。

正しい設置と選定により、システム全体の効率向上、設備の保護、安全性の確保が実現されます。高温高圧の蒸気設備では、スチームトラップを適切に維持管理することで、圧力上昇やドレン溜まりによる爆発リスクを低減し、安全性を高めることができます。

スチームトラップのトラブル防止

スチームトラップは蒸気システムの性能に影響を与える重要な機器です。トラブルを防ぐためには、適切な対策と定期的な点検メンテナンスが必要です。ここでは、主なトラブル防止の方法を紹介します。

ウォーターハンマー対策

ウォーターハンマーは、滞留したドレンに蒸気が触れた時に起こる現象です。配管の破損や機器の損傷を引き起こす可能性があるため、適切な配管傾斜や適切な口径サイズのスチームトラップを選ぶことが大切です。蒸気配管内に発生したドレンを効率的に排出することが重要です。

腐食防止の方法

蒸気システムの腐食は多くの問題を引き起こします。腐食を防ぐためには、適切な材質選択やpH管理、酸素除去などの方法があります。停止時に配管内部に滞留するドレンを無くす配管設計やオペレーションが重要です。定期的な点検と適切な水処理を行うことで、システムの寿命を延ばし、性能を維持できます。

定期点検の重要性

スチームトラップの定期点検は、トラブルを未然に防ぐため重要です。点検では、ドレン排出の状態やベント部分の確認、蒸気漏れの有無などをチェックします。クラフトビールの製造過程など、蒸気を多く使用する産業では、特に定期点検が重要です。

適切なメンテナンスにより、エネルギー効率の向上や燃料コストの削減が可能になります。

空気圧による作動機構等の採用によって温度変化に対応したTLV型式

TLV型式のスチームトラップは、蒸気システムにおいて重要な役割を果たす自動弁の一種です。

TLV型式のスチームトラップは、空気圧による作動機構等の採用によって温度変化に対応した優れた製品です。この製品は-40℃から400℃までの広い温度範囲で適用可能であり、小型でありながら高性能を実現しています。

本体は耐久性に優れた特殊合金で作られており、ジャケット保温内蔵設計により、低温環境でも結露の減少効果があります。また、バイパス機能も備えており、メンテナンスが容易になっています。固定部品が少なく、二つのシリーズから用途に合わせて選べます。

蒸気の閉鎖性能も高く、長時間の連続運転や高温の用途にも耐えられる体制を整えています。特に化学プラントや輸送機器の中でも高い評価を得ています。

FAQ

スチームトラップとは何ですか?

スチームトラップは、自動でドレンを排出する装置です。JISの定義では自動でドレンを排出するバルブです。一定の蒸気圧力を保持しながら、ドレンだけを効率的に排出します。

これにより、エネルギー効率が向上し、設備を保護します。

スチームトラップの基本的な役割は何ですか?

スチームトラップの役割は3つです。 1. ドレンを効率的に排出します。 2. エネルギー効率を最適化します。 3. 設備を保護します。

なぜスチームトラップが必要なのですか?

スチームトラップは、効率性と安全性を保つために必要です。ドレンがシステム内に蓄積すると、問題が発生します。

スチームトラップはこれらの問題を防ぎ、システムの効率を高めます。

スチームトラップの主な種類は何ですか?

主な種類は4つです。 1. メカニカル式:フロートやバケットを使います。 2. サーモスタティック式:温度差を使います。 3. サーモダイナミック式:蒸気と水の特性を使います。4.オリフィス式ドレンの排出量と合致したオリフィスで効率的にドレンを排出します

スチームトラップの正しい選定方法とは?

正しい選定方法は以下のポイントです。 1. 使用条件を確認します。 2. ドレン発生量を正確に把握します。 3. 安全係数を考慮します。 4. メンテナンス性や耐久性を考慮します。

これらのポイントを考慮することで、最適なトラップを選べます。

スチームトラップの主な設置場所はどこですか?

主な設置場所は以下です。 1. 蒸気主管 2. 分岐管 3. 熱交換器 4. 加熱タンク 5. 蒸気トレース配管

各場所で適切なトラップを選ぶことが大切です。

スチームトラップのトラブル防止方法は?

トラブル防止には以下の方法があります。 1. ウォーターハンマー対策 2. 腐食防止 3. 定期点検

これらの対策で、システムの安定運用と長寿命化が可能です。