この記事では、蒸気ボイラーについての疑問を解決することを目指しています。科学や技術、そして専門用語に深く踏み込んで、蒸気ボイラーに関する質問に対してお答えします。
蒸気ボイラーに関する意外な事実をぜひお楽しみください。
- 1. 1章目:蒸気ボイラーとは?
- 2. 2章目:蒸気ボイラーはどこで使われている?
- 2.1. 2-1.食品工場での使われ方
- 2.2. 2-2.一般家庭での使われ方
- 2.3. 2-3.工場内の加湿としての使われ方
- 2.4. 2-4.火力発電所での使われ方
- 2.5. 2-5.醸造所での使われ方
- 2.6. 2-6.医療施設での使われ方
- 3. 3章目:蒸気ボイラーの種類
- 4. 4章目:蒸気ボイラーの規模と資格
- 4.1. 簡易ボイラー
- 4.2. 小型ボイラー
- 4.3. 小規模ボイラー
- 4.4. ボイラー
- 5. 5章目:蒸気ボイラーの各届出
- 5.1. 5-1.消防設置届
- 5.2. 5-2.労働基準監督署
- 5.3. 5-3.煤煙届
- 5.4. 5-4.排水規制
- 6. 6章目:蒸気ボイラーと温水ボイラーの使用方法の違い
- 7. 7章目:蒸気ボイラーと圧力の関係とは?
- 8. 8章目:蒸気ボイラーに関するよくある質問
- 8.1. 8-1.ボイラーの蒸気配管を取り替える際資格は必要でしょうか?
- 8.2. 8-2.蒸気ボイラーの蒸気の温度って何度ぐらいあるのですか?
- 8.3. 8-3.蒸気ボイラーと電気では熱源としてどちらがコスト安いのでしょうか?
- 8.4. 8-4.蒸気ボイラーの1日の蒸気量を計算で出すのにはどうしたらいいですか?
- 9. 9章目:まとめ
1章目:蒸気ボイラーとは?
ボイラーは、簡単には燃料(油、ガス、石炭等)を燃やし内部に入れた水を温め、温水や蒸気を作る機械です。
発生した温水や蒸気は、配管を利用してボイラーから離れたところまで移送され、暖房・乾燥、工場の生産ラインでの熱源等として活用されます。
作られるお湯や蒸気を離れたところまで移送をして利用するための機械がボイラーです。
ボイラーというカテゴリーの中で、蒸気を発生させてその蒸気の特性を産業利用に供与するものが蒸気ボイラーです。
2章目:蒸気ボイラーはどこで使われている?
蒸気には多様な使用方法があり、産業利用において便利ないくつかの特徴があるため、様々な場所で使用されています。
弊社のお客様も以下のような様々な業種のお客様が蒸気ボイラーを納入され蒸気をお仕事に活用されています。
例)クリーニング・商業用洗濯・染色業・染み抜き・縫製業・アパレル・宿泊業・温浴施設・建築業・化学工場・鉄鋼工場・ガラス工場・コンクリート業・粉体加工・食品加工・水産業・農業・菌類培養・製菓(製パン、製麺、豆腐製造)・製餡業・飲料水・醸造・酒造・ブルワリー・木工、林業・学校・病院・福祉施設等、、
2-1.食品工場での使われ方
食品工場においての蒸気ボイラーの使用については、蒸気の特性を活かした複数の使用方法によって使用されている。
①蒸気を熱源として使用する場合は蒸気が圧力によって温度を一定にできる事から、主にジャケット釜等を利用した間接加熱によって、食材を加熱する方法をとっています
大量の食材を二重構造になった窯の蒸気室に一定の圧力に制御された蒸気を送り込み、一定の温度で間接加熱することで、焼く・茹でる・一定の温度で長時間保つ等の工程で熱源としての蒸気を利用しています
②蒸気を湿度として直接利用する 直接蒸気を利用することで湿度を利用した加工をします
わかりやすいのは蒸す工程ですが、一定の湿度を長時間保つことでの酵母の培養や食材の熟成、発酵等に蒸気を利用します
③蒸気が持つ高温の温度帯を使用した、食品加工や飲料加工工程での殺菌に蒸気を利用しています
①、②、③の蒸気による加工をする主な食品・食材としまして
中華麺、点心、お惣菜、給食、飲料水、、牛乳、乳製品、ミネラルウォーター、ビール、日本酒、醤油、味噌、海産物加工、パン酵母、きのこ類栽培、植物油、菓子、製餡、等があげられます。
2-2.一般家庭での使われ方
一般家庭で蒸気ボイラーが使われることはめったにありませんが、蒸気として日常で家庭で使用される物は、衣類の形成をするためのアイロンやハンドスチーマー。
汚れ落としとして蒸気を使用する洗浄機くらいではないでしょうか?
2-3.工場内の加湿としての使われ方
工場の作業環境としての加湿という点では蒸気ボイラーを使用する事はめったにありませんが、ユニットヒーター(ラジエター熱交換器)を使用した暖房としては蒸気ボイラーを利用するケースは多くあります。人の作業環境の暖房以外に動物等生物の飼育環境に蒸気を利用するケースもあります。
加湿という点においては食材加工や培養としての加湿は多くのところで使用されています。
2-4.火力発電所での使われ方
発電所で電気を作るために蒸気ボイラーが使われているとう事はめったにありません
発電をする際には回転をする力が必要で、その回転には大型のタービンを使います
火力発電所では火力によって水を蒸発させ、発生する大きな蒸気圧力を利用して動力源としての大型のタービンを回転させることで電気を作ります
蒸気ボイラーではありませんが、火山帯の地熱を利用した地熱発電も温泉地帯の蒸気を利用した発電になります。
2-5.醸造所での使われ方
日本酒、ビール、醤油、味噌等の醸造工程において、発酵や培養工程で必要な加湿や加温の工程管理は多くの場合で蒸気ボイラーが使用されています
発酵工程や培養工程にはその醸造に合わせた適正かつ安定した加湿、加温工程が必要になり
蒸気の特性を利用して管理することで安定した品質を保つことが可能になります。
また、上記の製造工場では製品を入れる瓶や容器の殺菌洗浄にも蒸気を積極的に使用しています
2-6.医療施設での使われ方
医療現場においては、医療行為に使用される器具や使い捨てができない綿布類等を殺菌するために蒸気を利用する場合があります。感染防止対策として医療関係者や患者さんの衣類を80度以上で一定時間の殺菌洗浄をするケースなどにも蒸気が利用されます
このケースは医療現場だけでなく、老人福祉施設などでも利用されることがあります。
また、医療の現場では病院施設内ではなく研究機関や製薬会社等でも菌の培養や一定の温度や湿度が必要な実験等で蒸気ボイラーが利用されています。
2-7. その他の場所での使われ方
土を使用する農作物を栽培する農業においては、土壌の殺菌や改良に蒸気ボイラーを使用することがあります。建築業においてもコンクリートの養生や固定のために蒸気ボイラーを使用することがあります。いずれの仕事において使用する道具や容器を洗浄したり殺菌する用途にも蒸気ボイラーは使用されています。
蒸気ボイラーの主な用途をまとめますと
- 加熱
- 殺菌
- 加湿
- 暖房
- 駆動
- 養生
- 培養・発酵
- 洗浄
等多岐にわたる用途として、蒸気ボイラーが利用されています
3章目:蒸気ボイラーの種類
1980年頃までの大型ボイラーの主流は丸ボイラーと言われる炉筒煙管式が主流で定期的な労基指導による点検義務とボイラー技士の配置が必要でしたが、時代の流れとともに現在の主流である貫流式ボイラーに置き換わってきました
貫流式蒸気ボイラー(以降貫流ボイラー)は水管ボイラーとも言われ、ボイラー内部に多数の水管を縦に配置することで水管の内部に通した水を効率的に加熱し蒸発を与えることができる仕組みになっています。
現在では小型の貫流ボイラーを複数台設置し、制御システムによって燃焼をコントロールすることで生産の効率化を図るとともに省エネ化にもなっています。
過去のように巨大なボイラーを1台設置し故障や点検の度に生産がストップするといったこともなくなり、複数台の設置で生産を止める要因を排除すると同時に故障時のリスク分散もでき、省コストにも寄与できるようになっています。
4章目:蒸気ボイラーの規模と資格
蒸気ボイラーは資格や届け出の有無を含めた以下のカテゴリーに区分されています。
簡易ボイラー
- 圧力0.1Mpa未満
- 伝熱面積5㎡未満
- 資格不要
小型ボイラー
- 圧力0.1Mpa未満
- 伝熱面積10㎡未満
- 特別教育講習受講
小規模ボイラー
- 伝熱面積30㎡未満
- 性能検査
- ボイラ取扱作業主任者選定
ボイラー
- 上記を超えるもの
- 性能検査
- ボイラ取扱作業主任者選定
5章目:蒸気ボイラーの各届出
5-1.消防設置届
原則簡易ボイラーを含む全ての蒸気ボイラー 所轄消防署の予防課
5-2.労働基準監督署
小型ボイラー以上、または伝熱面積5㎡以上のボイラー
5-3.煤煙届
燃料A重油で使用するボイラー 各自治体の条例による 自治体公害課
5-4.排水規制
排水除外設備がある自治体の条例による。一般的に工場で総排水量50t/1日以上の施設 自治体環境保全課
6章目:蒸気ボイラーと温水ボイラーの使用方法の違い
蒸気ボイラーは前出の蒸気の特性を利用し圧力による温度の一定や圧力そのもの、また湿度、広範囲への安定移送を利用して、様々な作業に使用します。
それに対して、温水ボイラーは給湯や暖房を主な用途として使用するボイラーで、比較的規模が大きい宿泊施設や温浴施設、福祉施設、寮などで使用されることが多いです。
温水ボイラーは直接水を加熱して給湯する直湯式とボイラーによって加熱された熱媒体を給湯タンクに循環させる間接加熱によって給湯タンクから配湯をするバコティン方式があります。
小規模事業では温水ボイラーではなく、業務用給湯機等を設置することが多いです。
当然ですが、機械としてのボイラーそのものの構造も違います。
設置や配管に対するノウハウも異なりますので、ボイラーと一口で言っても、メーカーや設置業者、販売ライン等のカテゴリーは温水ボイラーと蒸気ボイラーでは専門性を含めて異なる事が一般的となります。
7章目:蒸気ボイラーと圧力の関係とは?
蒸気ボイラーと圧力の関係には、その蒸気ボイラーの機種によってボイラー本体から出せる最高圧力が異なります。自動車に例えると最高速度は車によって違うという事に似ていますが、一般的に160Kg/H以下の簡易ボイラーの最高使用圧力は0.69Mpaでそれ以上になると0.98Mpaになります。また船舶用ボイラー等の特殊ボイラーに関しては10~15Mpano高圧力を出すものもあります。
8章目:蒸気ボイラーに関するよくある質問
8-1.ボイラーの蒸気配管を取り替える際資格は必要でしょうか?
蒸気配管そのものはボイラーではないので、資格(ボイラー整備士資格)は不要ですが
蒸気の配管においては、他の流体に無い配管内部での凝縮や再蒸発、ウォーターハンマー等の現象が配管施工の良し悪しにより起こりますので、蒸気配管の施工には蒸気知識と施工技術の両方が必要になります
8-2.蒸気ボイラーの蒸気の温度って何度ぐらいあるのですか?
簡易蒸気ボイラーではガスや石油を燃料として、水を加圧・加熱し、0.8MPaAで約175℃の蒸気を発生させる設備が主流である。
蒸気ボイラーで発生させる蒸気は圧力によって比例した温度を提供できることが最大の特徴であり、利点です。
蒸気ボイラーで発生する高圧の蒸気を減圧弁によて一定の圧力に制御することによって
使用したい均一な温度を長時間一定に保つことができます。
0.1Mpa=120℃
0.5Mpa=158℃
1Mpa=183℃
といった具合です。
水の沸騰が100℃ですので101℃以上の温度を一定に保つことが必要な工程において一番有効に温度管理ができるのが蒸気となります
これは電気ヒーターや火力のようにON/OFFによる温度の上がり下がりが無いので、温度管理による品質が重視される現場では最も適切なものが蒸気ボイラーとなります。
100℃以下ですと、温水ボイラーによるお湯の循環が主流になります。
8-3.蒸気ボイラーと電気では熱源としてどちらがコスト安いのでしょうか?
蒸気ボイラーの1日のコストは、ボイラーのサイズ、使用される燃料の種類、ボイラーの効率など、多くの要因によって異なる場合があります。
基本的に蒸気ボイラーは主にガス(都市ガスかプロパンガス)、石油(灯油かA重油)が燃料になりますので、各燃料の価格変動によってコストが変わることは否めませんが、日本国内の事情から考えますと、電気代が一番コストがかかりますので電気を使用して熱源や駆動を確保することはコストが一番かかることになります。
蒸気ボイラーにおいても電気を使用して蒸気を提供するものもボイラーメーカーのラインナップにある場合もありますが、電気ヒーターを使用する蒸気ボイラーにおいては、そのコストも高価になりますが蒸発できる水の量も少ない物しかなく、特別な環境(ガスや石油が使用できない環境)の場所に必要に応じて設置するケースがほとんどとなります。
8-4.蒸気ボイラーの1日の蒸気量を計算で出すのにはどうしたらいいですか?
まず、設計するボイラの等価蒸発量を求めます。つまり、ボイラーから伝わる熱量の合計から、ボイラーの外に放散される熱量を差し引いたものです。これは熱伝達を計算することで行います。
次に、換算式から実際の蒸発量を求めます。
一般的な蒸気ボイラーの必要な蒸気量の選定をした上で、機種を選定したり現在の使用状況を把握したりする際には、蒸気を使用する機器または作業における必要な1時間あたりの蒸気量から調べていきます。
機器であれば、機器を製造販売しているメーカーへ1時間あたりに必要な蒸気量と必要な蒸気圧力Mpaを問い合わせます。メーカーによってはカタログや仕様書に必要な蒸気量/Hと必要な蒸気圧力Mpaが記載されています
実際の作業時間も加味したうえで1日に必要な蒸気量を算出することができます。
それによって、必要な蒸気ボイラーの機種や燃料を検討することが一般的な方法です
蒸気配管に取り付ける蒸気の流量計もありますので。現状の確認には流量計を取り付けてデーターを取ることもできます。
9章目:まとめ
蒸気はその扱いやすく安全な自然の熱エネルギーという性質から、様々なジャンルで活用されています。そもそも蒸気の正体は水であり、その水の特性を産業に生かすという事で、産業革命からの時代を経た歴史ある媒体であるにも関わらず、まさにこれからの社会ののSDGSにも大きな寄与をするものであると考えます。
昭和工業では長年、蒸気ボイラー各メーカーの商品を多数取り扱ってまいりました。経験豊富なスタッフだからこそ、お客様それぞれの状況、ご事情を伺って、新品、中古品、合わせてそれぞれのニーズに最適な解決をご提案することが可能です。日本全国ネットワークがあり、対応しております。また、ご相談、お見積は無料です。導入、買い替えに際しお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。